サマータイム導入は正気の沙汰ではない!日本が必ず混乱する理由とは?主にシステム面から解説します。

今夏の暑さを受けて東京五輪での日本の暑さが心配されている。

正直2018年という夏の暑さは異常だと思うし、クーラーを夜中も含めて入れっぱなしにして過ごす夏なんてものは初めてだと思うほど暑さというものが限界まで来ている。

こういった感覚は老若男女関わらず感じているようで、私の家庭でも90歳を迎えようという祖父と20代の若者が同じように口をそろえて「こんなにも電気代を気にせずにクーラーをかけた夏はない」と口をそろえて言っていた。

こういった現状を思うと小学校や中学校の全クラスにクーラーを入れる事に反対する大人というのも一部の人たちなんだろうなと思うし、「自分たちが若いころは」なんていう言葉も歴史が証明するように平安時代からある言葉だということから、日本の暑さというのは異常なところまで来ていることが伺える。

そんな夏の暑さから懸念されている2020年の東京五輪の暑さ対策から今度はサマータイムである。

全くどうしてこうも極端な意見が出てきて、国民の意思とは違った方向にいこうとするのか理解しかねるが、サマータイムというものを導入する事に対しては日本では完全に意味のないということだということが未だにわかっていないというのに更に理解しかねる。

そして更に政府の偉いさん方々がサマータイムに反対するのは「根性がないからだ」とか「日本人ならできる」だとか根拠のない精神論を発しているように見えるのだからタチが悪い。

特にシステム面での理解をしている人の発言が局所的に取り扱われ、「パソコンを2時間早めるぐらい誰でもできる」とか「日本のエンジニアのスキルの低さから推進しないだけ」といった意見が出てくる始末なので、目も当てられない。

私個人はしがないエンジニアでしかないが、少なくとも専門分野として10年以上の実績を持った観点からサマータイム導入に反対する理由を述べたいと思う。

そもそもサマータイム導入がシステムに与える影響は何なのか?

理由を語る前に、そもそもサマータイム導入することによってどんな影響があるのか?と言った面を詳しく見ていきたい。

と言うのも記事を見ていると、「時計を2時間早めるだけなのに何が難しんだ?」と言っているように聞こえるものばかりだからである。

まずサマータイムを導入すると発生する事象。それは2時間時計の針を進めるということになる。

この1時間早めるという行為は例えば4月1日からサマータイムが始まるとするならば、本来は3月31日の22時に4月1日の0時を迎えるということにあたる。

上記の結果、どういう事が起こるかというと4月1日の本来の7時の時間帯にあたる時間はサマータイム導入により5時と示されることとなる。

そうすると普段7時に起きている人は同じ7時に起きたとしてもサマータイム導入前の5時に該当する時間となるわけだ。

上記のような時間のマジックによって日の出が早い夏の時間帯を朝早くから活動し、同じ8時間働いたとしてもサマータイム導入前の15時半がサマータイム導入後の17時半に該当するわけだから時間通りに終わったらいいじゃないか?というわけ。

そしてこれを暑さ対策と言い切る国がいるわけだが、賢明な人は既に気づいているだろう。

そもそも15時半ってめちゃくちゃ暑くないか?ということである。よって多分だがみなさん家には帰らずにサマータイム導入後も17時半までは働くだろうし、その時点で2時間は残業することとなるので結局残業もなくならないであろうということだ。

システム面から話がずれてしまったので話を戻すが、サマータイムを導入することになるとシステム面で対応しなければならないのは以下の2つとなる。

・サマータイム導入日にシステムの時間を早めてサマータイムとする対応が必要
・サマータイム終了日にシステムの時間を遅めて元に戻す対応が必要

さて、上記2つの対応が必要となるとそこまで大変そうに見えないのが言葉の不思議なのだが、実際には上記を行うためにやらなければならない事が以下のように山ほど出てくる。

・サマータイムに対応できるシステムなのかの調査
・サマータイム対応するためのシステム設計
・サマータイム対応するためのコンピュータ面以外での運用設計
・サマータイム対応に変更するためのシステム改修
・サマータイム変更に伴う外部企業との調整や認識合わせ
・システム改修に伴うテスト
・設計書の修正やテスト結果のまとめ
・お上の方々の承認
・サマータイム導入日のシステム変更
・サマータイム終了日のシステム変更
・サマータイム導入前後の稼働確認
・上記の対応に関する莫大なお金
・上記の対応に関する莫大な人手

上記はわかりやすいように箇条書きしたごく一部の項目でしかないが、とにかくシステムを変更するという事は一大プロジェクトになるし、特に時間を変更するとなると影響調査をしっかりとやらないと大変な事になるというのが大方のエンジニアの意見であり、真理である。

筆者も過去にシステムの時間変更をどうしてもしなければならない事があったが、その時はサーバー4つ程度のシステムだったのに半日以上の時間を要して変更からテストまでを行った経験をした。これはその時の作業メンバースキルどうこうではなく、時間を変更することに対する確認テストはそれだけ多くの項目をテストしておかないと何かあった時に取り返しのつかないことになってしまうからに他ならない。

時間を変更するということは時間を変更しても業務が続けれるということ

例えば時間を変えるということは、朝9時から開店するお店の開店時間にはシステムも開店状態になっていなければならないし、夜12時に閉店するなら閉店するようにシステムも変更されていなければならないということ。

そして朝9時に開店するお店のシステムは朝9時を迎えることができるように夜中のうちに必要なデータを揃えなければならないし、更新しないといけない。店頭にある在庫の数とシステム内での在庫の数に差があったら困るし、本日から売り出される新製品が開店時に店側で表示できなかったら手で打ち込みを行ったり、業務を継続できるように考えなければならない。

皆さんも翌朝出勤してきた際に出力されているはずのデータが出てこない!!とか印刷されるはずのプリントがされないとか、届くはずのものが届かないなんていう事態が発生したら怒るでしょうし、新商品がシステム上で出力されなかったら困るでしょう。

更にそれらが取引先に対して必要なものだったら?

間違いなく損害を出すことに繋がってしまう。

そういった意味で時間を変更するということは朝の業務開始状態を定刻通りに迎える必要があるし、夜の業務終了を定刻通りに迎えなければならないということだし、そこに難しさと影響を計り知れない部分が存在している。

オンラインは大事だが、オフラインも考慮が必要

少し専門的な話になりますが、普段の生活で一般の人が触れているのは「オンライン」と呼ばれる処理がほとんどである。

これは銀行のATMだったり、コンビニやスーパーのPOSだったり、証券会社の株取引システムだったりと世間の人々が触れる部分なので馴染みが深い部分になるので世間でも話題になるし、やり玉にも挙げられる処理。

これらの「オンライン」と呼ばれている部分はもちろん大切で、世間的にもトラブルが起こったら大問題として認識されており、つい先日もみずほ証券でこの手のトラブルが起き、取引が終日止まるという事態に陥っていた。

結局半月もの間、メンテナンスを繰り返していたし、その間SEは対応に迫られボロボロになったのだと思う。

しかし、これらが果たしてすべてがオンラインのせいなのか?というとそうではないことも結構あるというのがシステムの世界だ。そもそもオンライン処理を正常に行うための準備が正常に完了していたのか?という部分である。

これらのオンライン処理を正常に行うための準備として日々処理を行っているのが「オフライン処理」と呼ばれるものだ。

これは例えば夜中のうちに必要なデータをバックアップしておいたり、マスターデータを更新しておいたり、各業者間で交換したデータを自社データ内に反映する処理だったりするのだが、これらが正常に完了しなかったが為に翌日の業務に影響を及ぼすなんていうパターンも存在する。

例えばマスターデータが更新されないことによる製品情報の不備。本日付けで更新されていなければならない情報が更新されていない事による業務影響が発生する。

こういった処理一つとってもおおきな業務影響を呼ぶこともあるし、増してや日本規模での変更など正気の沙汰ではない。

例えば夜間のオフライン処理を4時間で終わらせなければならない設計になっていたとすると、サマータイムに変更する日と戻す日というのはそれぞれが処理時間を通常とは違う時間帯で行うことを余儀なくされる。

時間を早めてしまうことによってオフラインの実行可能時間が縮む場合もあるだろうし、場合によっては開始時間をすっ飛ばさなければならない可能性もあるので、夜間帯の処理についての実行開始時間や実行予測時間、終了時間といったものが重要になってくる可能性がある。

仮に夜間処理が完了しなかったらどうなるのか?最低限実施しなければならない事は?終了しなかった場合の代替手段は?といったものをしっかりと整理しておかなければ当日を迎えるなんてとてもじゃないが怖くて不可能だ。

増してやこれらが他社に関連するデータや処理だったとしたら翌朝から他社に出向いて謝らなければならない羽目となるし、下手したらオンライン処理を始めることができない事態に陥る可能性もある。

お上の方々が見ている部分はごく一部なのに対して、裏ではこんなにも多くの事が執り行われ、みなが一生懸命に処理を継続させるために考えているということをしっかりとわかっていたら「根性で何とかなる」なんていう発言は決して出てこないはずだ。

システムの変更は一瞬で終わるかもしれないが、むしろそれに伴う調整や運用変更の方が大変

昨今のシステムというのは自社内だけで完結しているシステムというのはほぼ皆無に近い。

どんなシステムでも複数の拠点をまたいで運用していたり、他社との接続というものをやっているはずだ。

そういった意味でシステムの変更よりもむしろ、関係者間の調整やシステム運用の変更といった面の方が多大な影響を及ぼす可能性が高い。

「パソコンの時間を進めるぐらい誰でもできる」と発言した官僚がいたかと思うが、確かにそんなことはほとんどの人ができるのだろう。

しかし、パソコンの事なんかよりももっと多くの変更が必要なものがあるということをわかってほしい。

少なくともサマータイム導入する日と戻す日というのは特別な運用が必要になってくるし、そのための運用を作らなければならない。

他社に物品を送る時間や物品が届く時間の調整、データをやりとりする時間についても変更タイミングを合わさないと大変な事になる。

上記のようなことから、システムとして時間を変更するという行為が及ぼす業務への影響や変更点の多さというものを考えると、国を挙げての総力でテスト実施する期間を設けでもしないと必ず大混乱が起きると断言できる。

そもそも筆者も今まで外部の企業とのテストを数多くこなしてきたが、大抵何かしか問題が起こる。それらのほとんどはお互いの認識違いだったりするのだが、中にはとんでもない勘違いから問題を大きくするパターンも見てきた。

そういった数社レベルでの変更でも発生するのに、今回のように国を挙げての対応をするなら尚更問題が起きたとしても不思議ではないし、むしろ発声しないとおかしいだろう。

そういった意味でも無駄に労力を使ったあげく、調整ミスによるシステムトラブルを誘発する可能性の方が高いので、無理にサマータイムなどというものに引っ張られてシステム変更なんてことをやらないほうがいいだろう。

昨今のシステムはサマータイムに対応しているという誤った認識

さて、上述した内容で何となく「オンライン」「オフライン」というものを考慮しないといけないということと、変更するのには単純にシステムのことだけ考えるのではなく通常業務、システム業務のことを考えなければならないことがわかったと思う。

こういったことを書くと必ず言われるのが「昨今のシステムは自動でサマータイム対応しているのではないの?」だ。

ちょっとググると「昨今のシステムはサマータイム対応した時間設定が存在する為、自動でサマータイムを考慮できる」のような記載が見つかるのでそのような事を言うのかもしれないが、実際は大きな認識違いをしている。

というのも「サマータイムに対応した時間設定が存在する」ということと「実際にサマータイム対応した時間設定が採用されている」というのは別次元の話だからだ。

そして日本企業の多くではサマータイムは考慮されていない設定が採用されていると言い切ってもいい。

そもそも日本企業ではシステム導入がはじまった1970年~80年代をはじめに、昨今に至るまでサマータイムなんてものが導入されるかも?といったことを思って設計していないし、そういった時間設定には無頓着な担当者がほとんどだからだ。

ほとんどがベンダーの言う通りに設定されているだろうし、そもそも気にしたことがない担当者も多いだろうから、多くの問題が起こるというのは容易に想像できる。

そもそもエンジニアとしても「サマータイムを考慮して時間設定をしましょう。」なんていう議論はしてこなかったし、そんなことを発言すれば失笑ものだったのが昨今の日本企業である。

よって日本企業のシステムはサマータイムには対応していないし、「対応させる気がなかったので全国で設計修正が発生します。」と言い切ってしまうのが現在の日本における立ち位置であり正しい認識となる。

それを「欧米では昔から取り入れているから」ということで日本も合わせようとしているが、そもそも欧米は大昔からサマータイムを導入して生活しているのでシステム開発が始まった当初から考慮されているのだ

それをぽっと出で採用しようとしている日本が理由に挙げてくるというのは図々しいし、全然状況が違う為、引き合いに出すこと自体が愚かしい。

まとめ

上述してきたように日本におけるサマータイム導入というのはシステム面で多大なる影響を生む。

システムといっても本当に設定変更で済めばいいのだが、それに伴う業務に関連する人たちの動きや他社間での調整というのが一層のトラブルを誘発しかねない。

そういった意味でも東京五輪においてサマータイムを導入するのには反対だし、時間調整や時期調整のみで何とか対処してほしいものである。