
映画「響 -HIBIKI-」を鑑賞してきました。
以前、以下の記事で原作のどこまでを映画化するのかについて書きましたが、本日は予測した内容があたっていたかも含めてネタバレありで感想を書きたいと思います。
http://niteru-news.info/2018/09/13/post-1157/
映画「HIBIKI -響-」のネタバレ感想
結論からいきますと映画「HIBIKI -響-」は原作が好きな人がいっても楽しめる映画に仕上がっていると思います。
まず気になる主演の平手友梨奈はまさに響そのもので、むしろ平手友梨奈をそのまま生き写しにしたら響になるのではないか?と思えるぐらいはまっていました。
以前の記事で平手友梨奈の評判が不安だという記事を書きましたが、全然そんなことはありませんでしたし、まさにサイレントマジョリティーを体現したような演技でした。
http://niteru-news.info/2018/05/06/post-385/
そして編集者の花井ふみを演じた北川景子や祖父江リカを演じたアヤカ・ウィルソンも平手友梨奈との掛け合いがうまくはまっていたように見えました。
北川景子は3年目の編集者として突っし、走る役を見事に演じていましたし、パコと魔法の絵本で有名となったアヤカ・ウィルソンも肌の色こそ原作のリカとは違うものの本音を見せない表面的にはへらへらしたように見えるが芯の強いリカを演じていました。
そして響と同時期に新人賞を受賞する田中康平を演じた柳楽優弥や芥川賞を目指す小説家を演じた小栗旬は短い出番ながらも圧倒的な存在感を示しており、放つ言葉一つで響との世界を作る凄みを見せていました。
北村有起哉や野間口徹は持ち前の演技力で響の世界の住人になりきっていましたし、高嶋政伸は原作以上にいやらしい編集長を演じており、作品にうまくはまっていました。
そして漫画原作にありがちな悪改変といった部分はなく、しっかりと漫画の世界観を映画にしたということがよく伝わる作品となっていたと思います。
正直、原作の6巻の途中まで再現するということを時間にも満たない映画で表現するには尺が足りていない感はありましたが、それでも響を中心として伝えるべき部分を伝えることができている衝撃的な映画となっていると思います。
「君の膵臓を食べたい」の時も思いましたが、原作に寄り添ってしっかりと仕上げてくるのは月川監督の手腕によるものだと思います。
そして今回主演した平手友梨奈さんは初日の撮影日に「撮影に入る前に監督と二人で話させてください」と直訴し、その場で「脚本どうだった?」と聞いた月川監督に対して「つまらなかった」と伝えたそう。
その姿は劇中で友人や有名作家に対しても「つまらなかった」と言い切る響そのもの。
平手友梨奈は現場に入る初日から既に響として生きていたのでしょうね。
まさに時代の先をゆく圧倒的な存在感で欅坂46の不動のセンターとして君臨している平手友梨奈ならではの表現だったと思います。
一方でやはり漫画6巻を題材としているだけあって、ほとんどが響に関連するエピソードをピックアップした形となり周辺人物のアイデンティティややりとりというのは省かれた感があります。
映画の長さからいくとどうしようもないのですが、まず文芸部員のかよちゃんがいないことにより、文芸部でありながら響とのかかわり方が文章に関わる事以外となる存在がいなくなってしまいます。
他にも北川景子演じる花井ふみのアイデンティティとなる編集長へのタンカや記者会見でのあるシーンは響へとうつされているし、リカの父である秋人との絡みもないため価値観のぶつかりあいに若干の薄みがあります。
特に響が感想を抱いた本に対する響以外の人物の評価がほとんど描かれない為、響の価値観が絶対となってしまっている部分があります。
そこを補うようにリカの小説に対する評価を言い合うシーンではリカが「もう書けない」とつぶやくシーンがあるのかと思いますが、リカとのやりとりは劇中で十分に描かれているので、もう少し第3者となる誰かの意見がほしかったなというところです。
総括して漫画原作を実写化した映画としてはかなり面白い部類だと思いますが、響以外の人物の絡みが好きな人には少し物足りなくうつるかもしれません。
映画「響 -HIBIKI-」の原作と違うところ
映画「響 -HIBIKI-」ではざっと以下の部分が原作とは違う描写となっていました。
もともと6巻の途中までを編集して映画としているので省いているところは結構多いと思います。
・文芸部が5人ではなく4人揃う事で問題ないこととなっている
・上記のため、本来文芸部に入部するはずの関口花代子(かよちゃん)が出てこず、かよちゃん関連のエピソードは一切描かれない
・屋上から落ちるシーンはタカヤと響の二人だけのシーンとなり、原作でリカとリョータが覗いているシーンはない
必然的に屋上から落ちる際には抱えてくれるリョータがいないため校庭にある木に落ちる事となる
・編集会議やリカとリョータが話すシーンはほぼ出てこない
・文芸部の顧問は出てこない
・文芸部の活動として部誌を作るが、特に誰かに読まれるといったシーンはなくリカが読むこととなっただけ
・リョータのカフェで働いているシーンがない
・編集長と話すふみの会話は響の小説についてふれるのみで、編集長にタンカは切らない
・ふみが響とはじめて会うのは祖父江秋人の書斎だが、特に遊びに来たという描写はない
また響の名前をその場で知り、書斎の中でふみが響に新人賞の話を伝える
・木島仁と初めて会ってから謝りに行くまでにふみと3人で家に戻るシーンは描かれず直接バーに行く
・リカの小説出版についてはリカが父である祖父江秋人の書斎で直接伝える
・リカが父に喜んでほしいという描写はなされない
・ゴスロリの衣装はリカが執筆の参考に購入したものを響にあげる描写に変更
よって小説家の吉野桔梗は出てこない
・木蓮の新人賞受賞までは結構原作がすっとばされ、浜辺で電話報告を受けるシーンから新人賞受賞のくだりが描かれる
・木蓮の新人賞を響と同じタイミングで受賞した田中康平(柳楽優弥)とは控室で出会うが、先輩作家が部屋を出た後ふみと3人だけの状態で握手を交わす
・新人賞受賞の会見後、原作では田中が電車に乗ると正面に響がいる描写だが、映画ではホームでのやりとりとなる
・リカの著書「四季ふる塔」についての感想を巡り喧嘩した際、りかが響に向かって直接「絶交だね」と言う
・リカの父である秋人がリカの小説を読み、「面白い」棚に入れるという
・芥川賞発表当日は原作通り動物園に行くが、その後デスティニーランドのパレードは見に行かない
・芥川賞と直木賞のノミネート発表日に響はりかの家に行くが、喧嘩をした後に扉の前で改めて感想を言った後、りかが「書けない」と言う
・芥川賞の受賞時に同じく受賞した作家は出てこない
・芥川賞受賞時の会見で原作では直接マイクで話さない響が直接話すシーンがある
・響を執拗に追いかける記者の矢野(野間口徹)にマイクをぶつけた後、原作にはない飛び蹴りをかます
・会見終了後、作家のところへはいかない
・山本春平(小栗旬)が線路に飛び込もうとしているところのシーン後、パトカーに連行される
まとめ
総じて個人的には面白く見ることができましたし、平手友梨奈の力というのを存分に見ることができた映画でした。
そして何よりも平手友梨奈主演だからこそ、周囲に陣取った俳優や女優陣の演技が素晴らしかったと思います。
原作の世界観を壊さずに実写化している漫画原作の映画としては素晴らしい出来ですし、何より響の価値観というのを平手友梨奈自身が体現し、実際に見せてくれていると思うので一見の価値ある映画に仕上がっている劇場で見るべき映画となっていました。
はじめてサイレントマジョリティーを聞いた時と同じように衝撃を受ける映画なので、ぜひ劇場へ足を運んでみることをおすすめします。