
東京都豊島区に本社を構えるレックアイ株式会社でIT社員の過労死が発生していたことに対して、労災認定を受けたことが報じられた。
この事件、裁量労働制のせいだと結論づけられているが、その他にも抱えている問題がいくつかある。
裁量労働制は残業を助長し、更に過労死を招く可能性があることはもちろんだが、裁量労働制を悪用する会社の在り方、もっと言えばそのビジネス構造にも問題があると言わざるを得ない。
そんな典型的な事件の大きな問題とは?
目次
事件の概要
記事によると発生した事件の概要は以下である。
システム開発会社で裁量労働制を適用されていた男性社員(当時28)が昨年8月に死亡したのは長時間労働が原因だったとして、池袋労働基準監督署(東京)が労災認定していたことが分かった。先月27日付。遺族代理人の川人博弁護士が16日に会見して公表した。
川人弁護士によると、男性は「レックアイ」(東京都豊島区)で不動産業者向けのシステム開発や営業を担当。昨年7月1日にチームリーダーに昇格し、実際に働いた時間に関わらず一定の時間働いたとみなして残業代込みの賃金を支払う裁量労働制が適用された。
納期が迫る仕事を抱え、7月上旬は4日午後1時~6日午前1時まで36時間連続で働くなど長時間労働が続いた。男性は6日未明、ツイッターに「うおー! やっとしごとおわったぁー!! 社会人になってから36時間ぶっ通しで働いたの初めてやがな」と書き込んでいた。その後体調を崩し、8月18日に都内の自宅で死亡しているのが見つかった。死因はくも膜下出血だった。池袋労基署は、死亡前2カ月(6月12日~8月14日)の時間外労働を月平均87時間45分と認定。このうち7月11日までの1カ月は約136時間にのぼり、「業務による明らかな過重負荷」として労災認定した。川人弁護士は「裁量労働制の適用が徹夜勤務を招いた要因の一つ。過労死につながった可能性は高い」と話した。
レックアイの担当者は取材に「労災認定の事実を把握しておらず、コメントは差し控える」とした。引用元:朝日新聞https://www.asahi.com/articles/ASL5J5HS2L5JULFA01X.html
この事件、記事の記載内容の中で以下のように引っかかる部分がでてくるため、
月平均87時間45分の不思議。労災認定分のため、もっと過酷では?
記事内ではこうある。
『死亡前2カ月(6月12日~8月14日)の時間外労働を月平均87時間45分と認定。このうち7月11日までの1カ月は約136時間にのぼり、「業務による明らかな過重負荷」として労災認定した。』
つまり労災認定したと判断した月平均の時間外労働時間が87時間45分だったわけだ。そして、このうち6/12〜7/11の1ヶ月間は136時間の時間外労働が発生していたということ。
この時間からいくと7/12〜8/14の約1ヶ月は39時間と30分にならないと月平均の残業時間にならない計算となる。よって、残業時間としては前月に比べると明らかに減少しているのである。
この時間の落差は明らかに操作された時間ととれる。どの程度の信憑性があるのか、労災認定を下した際の時間の算出方法はどのようになっているのか不明だが、実態はこんなもんではないのではないか?という疑問が後を絶たない。
実態はもっと過酷だったのではないかと思われるため、労災認定がおりたことに満足せずに、本当に起こっている実態を把握してほしいものだ。
明らかに勤務時間が多かった事による裁量労働制の採用。7/1以前の状況に目を向けるべき!
記事内では7/1にチームリーダーに昇格し、裁量労働制を採用したとあるが、そもそもこの事実こそ前月までの労働時間が多すぎたための措置ではないのか?と問いたい。
チームリーダーに昇格したぐらいで裁量労働制を採用するというのも単なるキッカケにしか見えず、単に労働時間が多いから裁量労働制としたのだろう。
この労働時間が多いから裁量労働制を採用するという姿勢が大きな間違いなのである。
裁量労働制とは、裁量が許される仕事の場合に適用されるべきであって、決して見込み労働時間が多い人に対して採用するものではない。
このあたりは IT業界では昔から言われていることで、裁量労働制を履き違えているとも言える部分だ。
IT業界の裁量労働制の履き違い
IT業界は裁量労働制をいち早く取り入れた業界だ。
これは長時間労働が常態化していることと時間による見積もりで売上を立てることが大きな原因だが、あとは客先常駐で労働時間の実態を会社が把握しないことが多いことにある。
そもそも客先常駐ともなれば裁量なんてないに等しい場合も多いため、裁量労働制なんて適用しても意味ないことが多いのだが。
そんな背景がある中で、裁量労働制という言葉は都合のよいように使われてきたのが実態だ。
このレックアイという会社はパッケージ適用が多かったと思われるが、結局お客さん会社に常駐、定時後帰社しての深夜までの作業といったことが常態化してしまっていることも容易に想像できる。
そんな人に対して裁量労働制を適用してはならないのだ!ここを履き違えている。
そういった状況で裁量労働制を適用してしまえば、労働時間は当然跳ね上がるし、長時間残業も常態化する。数字だけ見た会社からの裁量労働制の適用がなされるとどうしようもなくなる従業員も多いだろう。
労働時間を見てまずやるべきことは業務の見直しや体制の補強なのに、裁量労働とみなしてみなし残業とし、実態とかけ離れた勤務をさせてきているわけだ。
裁量労働制を適用する前に業務内容の精査と仕事の見直しをできない会社に裁量労働制を適用する資格はない!
裁量労働制に関する法案もまずはこういった実態を知り、適用する基準や制度を作っていかないと大きな悲劇を生むだろう。
まとめ
裁量労働制と一言で片付けるのも簡単だが、レックアイ の場合は裁量労働制を適用する以前から問題があったととれる。
またレックアイ は2017年10月に以下のセミナーが終了したお知らせを出している。そのセミナーとは
『働き方改革を実現する集客・営業仕組み化と不動産テック活用による業務効率化セミナー』
2017年8月に従業員を死なせておいて何が働き方改革だ!!と声を大にして言いたい。
こういった会社がこれから増えていかず健全な状況となることを祈るばかりだ。